みなさんは調理をする際、食材を正しく管理し調理することができていますか?
食中毒に感染してしまうと、嘔吐や腹痛、下痢、神経障害などで、ときには死に至ることがあります。
今回は、正しい食中毒に関する知識を習得し安心して楽しく食事をすることができるよう、食中毒の種類や予防法をまとめました。
食中毒とは?定義と一般的な症状について
食中毒を分類すると5つの種類があります。
・細菌性食中毒
・ウイルス性食中毒
・自然毒食中毒
・化学性食中毒
・寄生虫食中毒
食中毒とは、生きた病原微生物や、病原微生物が産出する毒素、有害な化学物質に汚染された食品を摂取することによって、一定の潜伏期間を経て健康障害をもたらすことです。
5つの食中毒について詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
食中毒の種類
①細菌性食中毒
「細菌性食中毒」は、腸管内に病原細菌が侵入して健康障害を起こす食中毒です。食品の色・味・香りなどには変化がないことが多いので注意が必要です。なお、細菌性食中毒は「感染型」と「毒素型」の2つに分類されます。
感染症型とは・・・食品内で一定数以上に増殖した原因菌を摂取す、または腸管内で原因菌が増殖することで起こる食 中毒です。感染症型には以下の6つに分類されます。
- サルモネラ属菌食中毒
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原因食品は、肉類、卵類およびそれらの加工品などです。ネズミやゴキブリ、ペットなどが媒介する二次感染もあります。
症状・・・激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐。重症の場合は死亡することもある。
腸炎ビブリオ食中毒-
腸炎ビブリオは好塩菌で、海水中に広く存在し、近海産の魚介類やその加工品から感染します。海水と同じ2〜3%の塩分濃度でもっとも増殖するため、漬物から感染することもあります。菌の分れる速度が非常に速く、私的発育温度の条件下では約10分間に1回分れる・増殖します。
症状・・・腹痛、激しい下痢、発熱、嘔吐。致命率は低い。
- 病原性大腸菌食中毒
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原因食品は、牛タタキ、ローストビーフ、サラダなどです。腸管への作用の仕方によって「腸管毒素原性」、「腸管病原性」、「腸管出血性」などに分類されます。「O157」で知られる「腸管出血性」は、ベロ毒素と呼ばれる毒素タンパク質を作るので「ベロ毒素産生大腸菌」と言われています。潜伏期間は平均4〜9日間、それ以上になります。
症状・・・出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群などの合併症を起こす場合もある。抵抗力の弱い乳幼児や小児、高齢者は最悪死に至ることもあるため、特に注意が必要。
- カンピロバクター食中毒
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家畜の中でも特に鶏肉の生食、加熱不足で感染することが多い食中毒です。少量の菌で発症に至り、潜伏期間が他の食中毒よりも比較的長いため、原因食品を特定することが難しい場合が多いです。カンピロバクターに汚染された生水や氷などが原因となることもあります。
- リステリア菌食中毒
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リステリア菌は土壌に生息する細菌です。4℃以下の低温でも増殖し、冷蔵・冷凍した食品でも室温状態に放置すると再び活発になり増殖します。
症状・・・免疫機能が低下している場合や、抵抗力が低下している高齢者や新生児、妊産婦などが感染すると髄膜炎や敗血症を発症することがある。患者の致死率が高い。
- エルシニア菌食中毒
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健康な豚であっても10%程度の割合でエルシニア菌を保菌しているため、豚肉を接収する場合には十分な加熱が必要です。0〜4℃の低温でも増殖するため、冷蔵保存では食中毒を妨げません。
毒素型とは・・・原因菌が増殖する際に産生する毒素が原因で起こる食中毒で、一般的に潜伏期間が短いのが特徴です。原因菌がどこで毒素を産生したかによって、「食品内毒素型」と「生体内毒素型」に分類できます。
- 黄色ブドウ球菌食中毒(食品内毒素型)
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鼻粘膜や化膿した傷の中に多く存在する「黄色ブドウ球菌」が、耐熱性の「エキテロトキシン」という毒素を作るります。汚染源となる人の手指を介し、弁当やおにぎり、麺類などの食品に広がります。
症状・・・潜伏期間が短く、発熱がほとんどない。症状の経過は早く、数時間で回復する。
- ボツリヌス菌食中毒(食品内毒素型)
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ボツリヌス菌は土壌などに広く分布しており、酸素がある状態では芽胞で存在しています。菌の種類はA、B、C、D、E、F、G型で、人間が中毒を起こすのは、A、B、E、F型です。ボツリヌス菌ははちみつの中に芽胞の状態で存在します。腸内環境が整っている大人が摂取しても芽胞は体外に排出されますが、腸内環境が未熟な乳児が摂取すると芽胞が腸管で増殖して毒素を作り、「乳児ボツリヌス菌」を発症する恐れがあるあるため、生後1年未満の乳児にははちみつを摂取させてはいけません。芽胞は熱に強いですが、毒素は比較的熱に弱いという特徴があります。
症状・・・神経障害で、麻痺や言語障害、手足の痺れなど、重篤の場合は死に至る。
- ウエルシュ菌食中毒(生体内毒素型)
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原因食品は、肉・魚介類の缶詰や、カレーや麺つゆなどです。大量調理をする集団給食施設で多発するため、「給食病」とも呼ばれます。人間の悪玉菌の1つでもあり、一定数以上に増殖すると毒素が産生され、発症に至ります。芽胞は熱に強く、加熱しても完全に死滅しません。
- セレウス菌食中毒(生体内毒素型)
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原因食品は、肉類や弁当など生体内毒素型の「下痢型」と、米飯や焼きそばなど食品内毒素型の「嘔吐型」の2つのタイプがあります。下痢型の毒素は熱に弱く、嘔吐型の毒素は熱に強い特徴があります。
②ウイルス性食中毒
「ウイルス性食中毒」のほとんどは、ノロウイルスによるものです。人から人へ手指などを介して感染する二次感染の他、汚染された貝類を食べることによる経口感染もあります。ノロウイルスは、一年を通して発生していますが、低気温で乾燥する冬季に特に流行します。ウイルスは食品中では増殖せず、人に感染する場合は、その腸管内で増殖します。感染力はとても強く、10〜100個と少量でも発症します。
症状・・・下痢や嘔吐、発熱などで、症状が回復してもウイルスが体内に残存し、しばらくは患者の便から排泄される。
③自然毒食中毒
植物や動物自体にとっては無事な成分が、人の体内に入ると有害になることがあります。これによる食中毒を「自然毒食中毒」といい、「植物性自然食中毒」と「動物性自然食中毒」とに大別されます。
植物性自然毒とは・・・人にとって有害な成分を含む植物には、毒きのこ、じゃがいも(芽や緑の部分)、青梅などがあります。有毒成分は主に青酸(シアン)配糖体やアルカロイド類です。
動物性自然毒とは・・・動物性自然毒食中毒を起こすものは、魚介類がほとんどです。プランクトンが産生した毒素を、食物連鎖によって体内に蓄積したものとしてフグ毒やシガテラ毒が、魚介類自体が体内で毒の成分を生成・蓄積したものにイシナギなどがあります。
④化学性食中毒
「化学性食中毒」は、化学性の有害物質に汚染されたものによって起こるだけでなく、食品添加物や毒物の誤用によって起こるものもあります。急性・慢性の中毒があり、公害病として認知されている「イタイイタイ病」や「水俣病」などは、少量の有害物質を長期間摂取することで起きた、慢性の化学性中毒です。化学性中毒の原因となる有害物質には、ヒスタミンや食品添加物などがあります。
- ヒスタミン食中毒(アレルギー様食中毒)
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化学性食中毒のほとんどは、食品中のアミン類である「ヒスタミン」によるものです。まぐろやさばなどの赤身魚が腐敗すると、魚肉に含まれる「ヒスチジン」が「ヒスタミン」に分解され、中毒を起こします。
症状・・・誰でも発症する可能性があり、食後1時間以内に顔が赤くなる、蕁麻疹、吐き気、頭痛などの症状が出る。アレルギー性に似ていることから「アレルギー様食中毒」といわれ、発症後は抗ヒスタミン薬の投与が必要である。
- 食品添加物による食中毒
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使用しても良い食品添加物の使用量や用途は「食品衛生法」で規制されており、厚生労働大臣が指定したもの以外の使用が禁止されています。認められていない化学物質を用いたり、使用量を守らなかったりした結果、中毒を起こす場合があるため、食品添加物は正しく使用しなければなりません。
⑤寄生虫食中毒
動物や人間の体にすみつき、そこから栄養分を摂取して生息する生物を「寄生虫」といい、寄生される生物を「宿主」と言います。日本では、衛生状態の改善などによって大幅に減りましたが、魚介類や食肉の生食、輸入食材・有機野菜のブームや海外渡航などにより、最近は増加傾向にあります。
- 魚介類から感染する寄生虫
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寄生虫の宿主となっている魚介類を人間が食べることで感染します。特に、あじやさばから感染する「アニサキス」による食中毒は、2018(平成30)年の食中毒統計によると、病因物質別発生事件数の第1位となっています。
- 食肉類から感染する寄生虫
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寄生虫の宿主となっている動物の肉を食べることで経口感染します。日本では欧米に比べて食肉類による寄生虫の事例は少ないですが、生肉や生焼けのステーキなどには注意が必要です。
- 野菜類・その他から感染する寄生虫
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野菜類から感染する寄生虫は、野菜に寄生しているのではなく虫卵が表面に付着しているだけです。その卵を摂取し、体内で孵化する場合がありますが、いずれもよく野菜を洗浄することで、大部分の感染を防止できます。
食中毒の予防法
①食材の選び方を学ぼう
食品の鮮度などの良し悪しを見分ける「鑑別」には、科学的検査だけでなく、見た目や臭いなどの感覚で判断する「簡易鑑別」が役に立ちます。主な食品の鮮度を判定の目安を覚えましょう。
農作物とその加工品の簡易鑑別
野菜や果実類などの農作物は、艶がありみずみずしいものが良好な状態です。米・豆類・小麦粉はよく乾燥しているものを選び、異物が混入していないかも確認します。
食品 | 鑑別ポイント |
野菜類 | ツヤ・弾力性がありみずみずしい。皮に張りがある。手に持つとずしりと重い。虫食いや傷などがなく、枯れ葉が混じっていない。 |
米 | よく乾燥している。粒がそろい、丸みを帯びている。艶のある薄銀白色をしている。鉛白色や暗色を帯びたものは注意する。 |
豆類 | よく乾燥していて硬く、水に漬けると沈む。粒が揃っている。 |
小麦粉 | 白くてよく乾燥している。粒が細かく、ダマがない。異物が混じっていない。 |
味噌 | ムラがなく色艶があり、特有の良い香りがする。水で薄めて温めたものを放置しても、長く濁っている。上澄みが出るものは注意する。 |
醤油 | 透明感があり、やや赤色を帯びている。特有の良い香りがあり、煮ても濁りがでない。不快な臭いや煮ごみがあるもの、煮て濁るものは注意する。 |
水産物とその加工品の簡易鑑別
鮮度の良い魚を見分ける際は、硬さやえらの色などをチェックします。水産物の加工品には、蒸し物、焼き物、練り物があり、いずれも表面や切断面などにネトが出ていないかを確認します。
食品 | 鑑別ポイント |
鮮魚類 | 身が硬く、水に沈む。眼球に張りがあり、澄んでいる。尾がピンとし、魚体はまっすぐに硬直。腹部に弾力がある。 |
貝類 | 触れた時の反応が早く、叩き合わせると澄んだ良い音がする。殻が割れている、貝柱が外れやすい、加熱しても殻が開かないなどには注意する。 |
水産物の加工品(ちくわ・はんぺん・魚肉ソーセージなど) | 色合いや弾力にムラがなく均一。表面にネトが出ている。アンモニア臭がある、包装フィルムが膨張しているものは注意する。魚肉ハムや魚肉ソーセージの場合は、切断したときに水気がなくボロボロしたものや、包装材と内容物の接触部分が退職しているものに注意する。 |
畜産物とその加工品の簡易鑑別
肉類は、死後間もないものは硬く、時間が経過すると熟成して柔らかくなります。つまり、硬く締まりがあるものが新鮮といえます。また、卵の表面がザラザラしているか、バターは色に濁りやムラがないかなどが鑑別ポイントです。加工品のハムは、軽く押して水分が出るようなものは腐敗している恐れがあるので注意です。
食品 | 鑑別ポイント |
肉類 | 牛肉は鮮紅色に近く、脂肪は白っぽくて艶がある。豚肉は淡紅色で艶があり、よく引き締まっている。鶏肉は皮の毛穴がブツブツと盛り上がり、重みがある。血液や水分などのドリップが流れ出して粘り気があるものは注意する。 |
卵 | 皮の表面がザラザラしていて艶がなく、硬くて厚い。光に透かすと明るい。卵黄が盛り上がっていて張りがあり、卵白が流れにくい。割れやすかったり、卵黄が濁ったりしているものは注意。 |
牛乳 | 沈殿物、凝固物、異物、異臭がない。酸味や苦味があったり、加熱した際に凝固したりするものは注意する。 |
バター | 特有の芳香があり、色に濁りやムラがない。熱すると泡立ち、溶けるとほぼ透明。溶けると濁り、古い油の匂いがするものは注意する。 |
ハム | 軽く押すと水分が出たり、脂肪分が分離したりしているものは注意する。 |
②調理前の準備について
食品を取り扱う者は、自分自身が健康であることと周囲の衛生環境を整えることが大切です。食品取扱者は次のことに気をつけます。
- 服装について
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○清潔な仕事着(またはエプロン)・帽子を着用する(髪の毛混入の防止)
○作業内容により、マスクや使い捨て手袋を着用する。
○使い捨て手袋は必ず消毒してから作業を行い、他の作業に移るときは交換する。
○仕事着(またはエプロン)や帽子を着用したまま、調理室を出たり便所に行ったりしてはならない。
○指輪の着用、ネイルをしてはならない。 - 習慣について
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○常に爪を短く切って手洗いや消毒に努める。
○便所に行った後は、必ず手を洗い消毒をする。
○食器や調理器具が、髪、鼻、口、耳などに触れないよう注意する。
○たんや唾を吐かない、タバコを吸わない。
○調理中の不用意な会話や手遊びは避ける。
③正しい調理方法について
食中毒を起こさないためには正しい調理法を理解しなければなりません。安心して食卓に運べるよう次の様々な食中毒に対する対策をまとめました。
○器具や手指を消毒する。
○迅速な調理・低温保存を心がける。
○殺菌・消毒により細菌を殺す。
○多くの細菌は熱に弱いため、食品を十分に加熱する。
○80℃〜90℃・90秒以上の加熱でウイルスを不活化させる→牡蠣などの二枚貝は生食を避け、十分に加熱する。
○じゃがいもは、発芽時の芽や緑色部分に含まれるソラニンが有害成分であるため、芽の部分はしっかりと取り除き、厚めに皮を剥く。
○寄生虫食中毒の感染予防のため、洗浄・熱湯消毒・加熱処理・冷凍処理・調理器具を行うことが大切。
④食品の正しい保存方法について
食品の保存は、腐敗の原因となる微生物の活動を制御することです。食品の保存の状態、温度などによっても微生物の増殖度合いは左右されます。家庭でできる食品を保存する方法は次のようなものがあります。
低温貯蔵法・・・食品を低温で保存することで、微生物の増殖を抑制したり、酵素の活性を低下させたりすることができます。これは、ほとんどの微生物の至適発育温度が30℃〜40℃の中温菌であるためで、殺菌はできませんが、微生物の活動を抑制することができます。低温貯蔵法には次のようなものがあります。
冷蔵法 | 0℃〜10℃で保存。冷蔵庫を使用。 |
チルド | 0℃前後で保存。 |
パーシャルフリージング | -3℃〜0℃で保存。 |
冷凍法 | -40℃〜-30℃で急速で凍らせ、-15℃以下で保存。 |
食材にはそれぞれ保存・貯蔵するのに最適な温度があります。野菜の多くは、0℃付近ですが、ウリ科やナス科の野菜には低温障害があるため7℃〜8℃を目安にします。
0℃〜5℃ | 大根・かぶ・キャベツ・魚介類など |
7℃〜10℃ | ピーマン・トマト・ナス・食肉・卵など。 |
10℃〜14℃以下 | きゅうり・じゃがいも・かぼちゃ・生姜など。 |
まとめ
いかがでしたか? 今回は食中毒の種類や予防法についてご紹介しました。
人の体をつくる食べ物の正しい扱い方を知ることで、安心して食卓を囲むことが出来ます。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
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